世界一周航海達成して思うこと


近親者である家族の愛を感じた。無償の愛。

多くの方からの期待感、好奇心を背負っての達成感は生涯二度とないだろう。

平々凡々な生活にこそ、かけがえのない愛が満ちあふれている。


八重山号フラッグ

多くの方々の寄せ書きがある。正に、多くの夢を乗せての航海だった!


最高のクルー、佑樹

航海を終えた今第一に感じるのは、船内生活の重要性だ。

佑樹という素晴らしいクルーと共に世界一周を達成できたことは、私の人生最大の喜びだ。

おそらくは、楽しかったことより、苦しかったことのほうが多いだろう。

狭い空間の中での共同生活は、決して楽しいものではない。我慢することがあまりにも多いからだ。

幸運にも我々は、その潤滑剤として、いろいろな短期クルーを得た。

 


短期クルー

・斎藤頼子(石垣~モルジブ)

・リンコーちゃん(モルジブ~レユニオン、ブラジル~カリブ海、フィジー~オーストラリア)

・マックス(南アフリカ~セントマーチン)

・デボラ(フィジー~オーストラリア)

・永尾彩子(パプアニューギニア~石垣)

など、たくさんのクルーが八重山号での航海に参加した。彼らは退屈な航海中で、お互いへの好奇心から、いろいろな話題を提供してくれた。

ありがとう。

言葉の不自由さは、それほど重要ではなかった。クルーはみな素直に従ってくれたし、楽しもうという気持ちと好奇心が伝わってきた。

語学力は確かに我々の問題であった。石垣出港後、佑樹と話し合い、英会話程度はできるようになろうと誓いあった。

確かに、航海が進むにつれて、会話力が増し、好奇心が増した。心と心が通じ合うことの素晴らしさが、日に日に増して探究心は、尽きることがなかった。

 

さまざまな暮らし

では、我々にとって、世界一周航海とはどういうものだったのだろうか? 

航海の中で、世界中の大きい国の生活に触れ、そしてあるときは小さい国や小さな島の生活と文化にも触れることができた。

欲しいものはなんでも手に入る国があれば、文明の素晴らしさを未だ、知らない人たちにも遭遇した。

 

・マダガスカルでは、ジャングルの中でキツネザルと一緒の生活をする家族を見た。

小川で子供たちが歓声を上げ、遊びながら身体をきれいにしているのだ。海に近い人達は、海で遊びながら身体をきれいに保つ、生活の知恵を持っている。

 

・バヌアツでは、幸せにすごしている家族が、子どもの生まれつきの目の病気に悩んでいた。病院に行きたいが遠すぎて、彼らには、叶わぬ夢であった。

 

・パプアニューギニアのある島では、暮らしにはそれほど不自由はないが、病院に行くのにセーリングカヌーで3日がかりだ。天候によっては何日も病院にいけないことが問題だとの話だ。この国には、世界からの援助があるにもかかわらず、末端の小さな島には援助が届かないのだ。

 

・島しょ国でJICA(日本国際協力機構)の活動を見た。この機関は、開発途上国の経済や社会の発展、そして向上のために、資金や技術の提供をしている。そんなことを現地の人たちから聞かされると、たしかに誇れることだ。

 

しかし、一方では、ミクロネシア諸島のある島で、場違いの物を見た。電気、水道、車などない島だが、大きな漁網とヤマハの船外機があるのだ。

日本からの寄付だとのこと。ガソリンなど手に入らない島なのだ。この島の漁船は木彫りのカヌーセーリングだ。

この島の青年は2年間、横浜で漁業の研修を受けたという。このようなミスマッチがなくなることを祈るのみだ。

 

八重山の海に思う

世界中のすばらしい大自然を見てきた。

特に、5回の赤道通過で、サンゴ礁海域をのぞくことができた。

そして今、八重山の海のすばらしさは世界一であると、あらためて断言できる。

しかし同時に、その美しさに反比例して、なくなってしまう危険性も世界一である。何故なら、人間の負荷が右肩上がりに上がっている。

見て見ぬふりで良いのだろうか。

 

観光地のあり方

世界中の観光地を見てきた。特に海に関わる観光地をだ。

素晴らしい観光地には、どんな要素があるだろう。

安全であること、きれいであること、地元の文化が見えること、最後は総合的に快適であること。

安全とは治安のことで、身の危険を感じるようでは楽しめない。きれいとは衛生面のことで、路上にゴミが吹き溜まっているなど論外である。

 

地元の文化とは、食事、生活、伝統芸能などが楽しめることだ。

快適性とは、交通の利便性が第一ではなく、不便さを事前に知ってもらい、不便さを楽しんでもらうことが重要である。

 

いろいろ見てきて、気になる点の筆頭に挙がるのが、アジアの海は世界一きたないことだ。

カリブ海、タヒチ諸島、オーストラリア沿岸はどこをとってもゴミを見なかった。皆無といっても過言ではない。

これらの国の街中はゴミ箱がたくさん置かれ、行政の清掃車がかなり頻繁に清掃していた。

逆に日本の生活ゴミ分別は、世界一素晴らしいシステムであり、これ以上の国を見なかった。一方では、路上や沿岸はといえば、他国からのゴミを差し引いても汚い。観光先進地で目を見張ったのは、行政のリーダーシップだ。

 

100年後のすばらしい日本、すばらしい八重山のために、英語を勉強しましょう。中国語を勉強すべきだ。

そして、大事な自然との持続可能な共生に向け、努力しなければならない。

 

八重山の海のすばらしさは、明るさであり、くつろげる海であることだ。さらにスローライフの伝統文化は、国際観光都市としての要素を十分備えている。観光は文化である。すばらしい文化を作るために、努力しなければと思う。


これからの生き方

この航海で知ったことは、人間の幸せや豊かさとは、小さな夢に対してほんの少しの努力ができること、そしてほんの少しの結果が報われること、そんな生活の営みではないかと思う。

 

南アフリカでは、国民が国を見離し、他国へ脱出している現状を目にした。犯罪の増加、エイズ患者の増加、失業率増加……

どれ一つとっても、将来の明るい展望が見えないのだ。

全アフリカ中から不法滞在者が流入してしまうことが原因なのだが、止めようがない。

 

ひるがえって日本を見たとき、日本には努力をすれば報われる環境がある。

これは素晴らしいことだし、一人一人が努力することにより、なお一層の豊かさが実感できる人生になるはずだ。

 

今年60歳になる私個人としては、老いることへの好奇心を持ち、観光業に取り組み、

お客様とのたわいのないお話が楽しめる暮らしこそ、次なる私の夢である。

私の経験が、皆さまの好奇心をくすぐりだすきっかけになれば幸いだ。

 

世界一周航海を振り返って……佑樹の言葉

 

都会で仕事をしているとあの時の旅を思い出します。

 

常に傾き揺れる足元、湿った布団、見渡す限り海しかない世界、旅の記憶は決して良い思い出だけではありませんが、それでも懐かしく再び冒険に出たいという気持ちが心の片隅でくすぶっています。

 

まぶしいくらいにぎらつく星空、上下左右の感覚がなくなる新月の夜、

様々な自然や文化、人との出逢い、そういった一つ一つの経験が僕の人生を彩ってくれているとふと思います。

 


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